中部エリア — 供給と需要はDCでどう変わるか

中部電力パワーグリッド管内。1マス=100MW(10万kW)。供給は設備容量、需要は年間ピーク時の最大需要電力。左右を同じ物差しで並べています。

中部の戦略は2本を同時に進める。1本目はデータセンターの誘致そのもの:桑名市多度町小山の用地(受電枠120MW→最終350MWを中部電力が事前に申込済み)にDC事業者を入れ、JERAの知多火力・碧南火力の構内にもDCを建てて発電所から直接給電する(千葉火力と同じ方式)。2本目は製造業の側から需要を作ること:工場のロボット・検査・設備保全にAIを組み込み、工場内のGPU(ミリ秒で応答する処理)と、学習や重い推論を行う域内DCの両方で電力需要を積み上げる。2本目が進むほど1本目のDC事業者は投資を決めやすくなり、DCが建てば製造データが中部の外に出ずに済み、さらにAI導入が進む。浜岡が止まったままでLNG火力に依存しているため、この需要を低炭素の電気でまかなうことが課題。

2026
2016 ← 10年前2026 今10年後 → 2036

供給力

需要(最大需要電力)

需要を作るシミュレーション(2036年)

動かすのは打ち手の数です。MWは結果として出ます。基準線は2本——OCCTOの需要想定(このエリアの2034年度、蓋然性の高い案件だけを積んだ値)と、エネルギー基本計画の2040年目標(全国1.1〜1.2兆kWh)をこのエリアの電力量シェアで按分した値——で、どちらも所与として動かしません。

信頼電源と再エネのバランス/DCの重み

物差し:1マス(100MW)はどれくらいか

100MW = 一般家庭 約3万世帯のピーク需要、あるいは中規模の工場団地1つ 400MW = JERA千葉火力に計画されるAIデータセンター1件(国内最大級) 1,000MW(1GW)= 原子力発電所1基、LNG火力の大型1系列、秋田火力跡で検討される誘致規模 10,000MW(10GW)= 10×10のブロック。北海道エリア全体のピーク需要の約2倍、東京エリアの約5分の1

太陽光・風力のマスは「設備容量」なので、実際に出せる電気は時間帯と天候で大きく変わります(太陽光の年間平均は容量の15%前後)。同じマス数でも、火力・原子力・水力の1マスと再エネの1マスは「頼れる度合い」が違う、という前提で見てください。供給パネルの「ピーク時供給力」はその差を係数で反映したものです。

需要を作る — 中部電力 + JERA のビジネス戦略

いまの動き(確認済みの事実)

  • 桑名市と連携し多度町小山のDC用地に受電枠(120→350MW)を事前確保(市資料「桑名市と中部電力の取り組み」)
  • 名古屋にDC+IX拠点NGO1(2027/4)、JR東海×PFNが新幹線沿線遊休地でDC構築を共同検討(2026/3〜)、ステーションAiがフィジカルAIのデータ収集拠点を設置(2026/12稼働目標)
  • JERA知多・碧南など域内の大型火力は千葉型の展開候補(拠点未発表)。浜岡は審査中で原子力ゼロが続く

持っているもの

  • トヨタ系を中心とする自動車・機械・電機の工場群。AIを組み込む現場と、AIに学ばせる製造データが国内で最も多い
  • 製造データを中部の外に出したくないという工場側の事情。これが中部の中にDCを建てる理由になる
  • 桑名市多度町小山の用地(受電枠350MW)、JERAの知多・碧南・西名古屋火力の構内用地、大規模な水力発電所(揚水を含む)

戦略オプション

打ち手中身当方評価
戦略1:データセンターの誘致桑名市多度町小山の用地(受電枠120→350MW)にDC事業者を決める。JERA知多火力・碧南火力の構内にDCを建て、発電所から直接給電する(千葉火力と同じ方式、計1〜2GW)。桑名と同じ「市と組んで受電枠を先に申し込んだ用地」を東濃・三河にも用意する◎ 桑名は受電枠が確保済みで、工事契約から約53か月で120MWを供給できる。誘致できる案件は先に取る
戦略2:製造業の工場からAI需要を作る工場のロボット・外観検査・搬送・設備保全にAIを組み込み、工場内のGPU(1工場あたり数MW)と、学習や重い推論を処理する域内DCの電力需要を積み上げる。中部電力ミライズが製造業向けに「AI導入の支援+工場の電気+DC接続」を一つの契約で売る◎ 1工場あたり数MWでも、トヨタ系の部品メーカーまで広がれば桑名1件分(350MW)を超える。この需要が見えるほど戦略1のDC事業者が投資を決めやすくなる
2本をつなぐ契約「製造データは中部の外に出さない」を条件に、工場・DC・中部電力の3者で電気と接続を1つの契約にまとめる。DC向けの特別高圧、工場の電化、電気がいつ・どこで作られたかの証明(24時間365日の時間帯別)をセットにする。浜岡再稼働までは水力・蓄電池・LNGで裏打ちする○ 工場・DC事業者・中部電力の3者契約の設計が難所。経産省のフィジカルAI政策と接続する

シミュレーションの前提:1件あたりのMWは公表案件(桑名350MW、JERA千葉400MW、川内350MW等)に合わせた丸め。負荷率はDC80%・半導体85%・工場AI70%・電化50%で年間電力量に換算。エネ基の按分は、全国目標をこのエリアの現在の電力量シェアで割ったもの(国は地域配分を示していない)。売上は販売単価15円/kWhの概算で、託送・燃料費を含む粗い目安。予備率は上の供給パネルの2036年シナリオ(原子力再稼働・洋上風力等の仮置き)に対する値。

データの確度:実績公表統計からの概数(数%単位の丸めあり) 想定OCCTO需要想定(2025年度版)のDC・半導体の個別計上を、地域シェアで按分した値 仮置き当方シナリオ(原子力の再稼働、洋上風力の稼働、石炭の退役などを仮定)。2016年と2026年の供給は概ね実績、需要のDC・半導体は想定、2036年はすべて仮置きです。

供給の前提:浜岡(361.7万kW)は審査中のため2036年も0で置いた。再稼働すれば信頼電源が一気に厚くなる。碧南は石炭・バイオマス混焼。 蓄電池(系統用)は2026年が各エリアの運転開始済み容量の概数、2036年は接続申込の多さを踏まえた仮置き。持続時間は2〜4時間を想定し、データセンター構内のUPS・自家用蓄電池は含めない。

需要の前提:一般需要はOCCTO需要想定の最大需要電力(省エネと人口減で横ばい〜微減)。DC・半導体は同想定の全国個別計上(2034年度:DC616万kW・半導体99万kW)を、DC需要の地域シェア(東京62%・関西12%・中部9%、他は当方按分)で配分し、2036年まで延長。「発表ベースのパイプライン」は本サイトの地図に載せた計画の受電容量の合計で、OCCTO想定とは別物(すべて実現するとは限らない)。

出所:電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2025年度)」、資源エネルギー庁 電力調査統計・エネルギー白書、各社供給計画・プレスリリース、本サイト地図の案件データ。数値は議論の叩き台であり、投資判断には一次資料で再確認してください。